絵(図像)を描くという点はいっしょですが、仕事内容は全然ちがいます。
基本的に、イラストは一枚もの、絵本は続きもの。
文と絵、ストーリーで構成されてるのが絵本。
ストーリーは水のように薄いものもありますけど、次のページへつなげる何かが必要です。
イラストはというと、文章をわかりやすくしたり装飾したりするのが主な役割。
広告イラストや、本の挿絵やカバーなどを描くのが仕事です。
だからというか、イラストレーターはデザインのスキルが高いと思います。
ぱっと見て、美しいとか、わかりやすいとか、そういうデザイン面の工夫が突出してます。
今回は、そんなイラストレーターたちのおすすめの絵本を紹介します。
- 1 「ネコのなまえは?」枡野 浩一 / 文 目黒 雅也 / 絵 絵本館
- 2 「あかいふうせん」山田 和明 出版ワークス
- 3 「まっくろけ まっしろけ」マックス・アマート いけもと なおみ / 訳 潮出版社
- 4 「ごはん山」はらぺこめがね 白泉社
- 5 「なつのいちにち」はた こうしろう 偕成社
- 6 「なずず このっぺ?」カーソン・エリス アーサー・ビナード / 訳 フレーベル館
- 7 「おおきなキャンドル馬車にのせ」たむら しげる 偕成社
- 8 「ふゆのはなさいた」安東 みきえ / 文 吉田 尚令 / 絵 アリス館
- 9 「パンどろぼう」柴田 ケイコ 角川書店
- 10 「ゆうだちのまち」杉田 比呂美 アリス館
- 11 「かわいいことりちゃん」コナツ マキコ / 作 コナツ コウイチ / 絵 ニジノ絵本屋
- 12 「シロナガスクジラ」ジェニ・デズモンド 福本 由紀子 / 訳 BL出版
- 13 「すいかのプール」アンニョン・タル 斎藤 真理子/ 訳 岩波書店
- 14 「ひびけ わたしの うたごえ」カロライン・ウッドワード / 文 ジュリー・モースタッド / 絵 むらおか みえ / 訳 福音館書店
- 15 「ぼくのおじいちゃん」カタリーナ・ソブラル 松浦 弥太郎 / 訳 アノニマ・スタジオ
「ネコのなまえは?」枡野 浩一 / 文 目黒 雅也 / 絵 絵本館
【ざっくりまとめると】
空から降ってきた手のひらサイズの猫。飼い犬、飼い主、飼い主の家、飼い主の家の裏山へと、大きく育っていく。
【見どころ】
山になった猫(山猫じゃないよ)
【ジャンル】
ネコゴジラ
かぐや猫
月が産み落とした黄色いネコ。
手のひらサイズの頃は、ブタのようなピンク色。
成長して黄色くなるのだけど、黄色いネコって現実にいない。
まあ月もほんとは黄色じゃない。
黄色はこの絵本のテーマカラーになっていて、すごくいい黄色。
月とネコは、この金色っぽい明るい黄色でシンクロしてる。
月がにゃあにゃあ鳴くなんて、想像しただけでワクワクする。
「あかいふうせん」山田 和明 出版ワークス
【ざっくりまとめると】
バスに乗った少女の手から、赤い風船が飛んでいってしまう。あとから乗ってきたクマ、うさぎ、ペンギン、ゾウ、キリンたちといっしょに風船探し。
【見どころ】
バスが走るカラフルな土地
【ジャンル】
横スクロール・メルヘン
バスでGO!
色づかいが気持ちがいいほど完璧。
赤も黄も青も緑もオレンジも、絶妙だ。
洗練されてて、こういう色に囲まれて暮らしたいと思うくらい。
絵のタッチはいい意味で頼りなげで、家や樹木なんか、おしゃれ雑貨の小物みたいに愛らしい。
植物や波打つ丘の曲線が、この横長のパノラマの絵に効果的。
遠景を走るバスの道のりが、うねっていて楽しいのだ。
僕はリアルでも絵の中でも、こういう遠くを走る乗り物を横からみるのが好きでたまらない。
都会ではめったにお目にかかれない光景なのだけど、田舎でたまにみると感動する。
この絵本には、横スクロールのそんなシーンがたくさんあるのがうれしい。
「まっくろけ まっしろけ」マックス・アマート いけもと なおみ / 訳 潮出版社
【ざっくりまとめると】
真っ白が好きなけしごむくんと、真っ黒が好きなえんぴつくん。えんぴつくんが書けば、けしごむくんが消して、真逆のふたりの喧嘩はどんどんエスカレートしていく。
【見どころ】
けしごむくんのロケットスピン
【ジャンル】
カンフー文房具
えんぴつvsけしごむ 白黒の大決戦
実写の鉛筆と消しゴムに、顔と手足を描きこんで、走らせたり寝かせたりポーズをとらせたり。
こどもが教科書に落書きして遊ぶようなノリだ。
でも、そこはさすがプロ。
とてもクオリティーの高い遊びとなっている。
絵本というより、アートかもしれない。
鉛筆の大群に追われ、消しカスをまき散らしながら逃げるけしごむくん。
この絵本の目玉となるような、おもしろいシーンだけど、このあとの盛り上がりもすごい。
そして何より、けしごむくんの表現がみごと。
消しゴムの角度と、棒の手足の描写だけで、こんなにも表現豊かというのは、器用にもほどがある。
きっと動画にしても最高だと思う。
「ごはん山」はらぺこめがね 白泉社
【ざっくりまとめると】
ふりかけごはん、納豆ごはん、チャーハン、おにぎり、オムライスなど、こんもりしたごはんの山を、ごはん大好き家族が山登り。
【見どころ】
しろめしアルプス
【ジャンル】
ごはん登山
ごはん百名山
まず、表紙の「ごはん山」の文字が海苔になってるのがいい。
ごはんの山と、梅干しの朝日。そして「はらぺこ」の赤いハンコ。
表紙のデザインとして、もう言うことないできばえだ。
ページをめくるたび、クローズアップしたいろんな種類のごはんの山が、ドンとあらわれる。
ふりかけごはんの「しゃかしゃか山」は、平凡なふりかけが、カラフルな雪のようで美しい。雪とちがって、ベタベタするだろうけど。
こどものころ、ミクロサイズになれば、好きな食べ物がいくらでも食べられるぞ、と妄想したことがある。
当時の僕は、魚の目玉が好物だった(今は食べないけど)。
ミクロサイズになって、魚の目玉を両手いっぱいに抱えてかぶりつくのを妄想してた。
この絵本のように、ごはん山を登ってみるのも、楽しい妄想になりそうだ。
「おいしいは美しい」を追求する、はらぺこめがねの絵本どんな絵本作家さん?原田しんやさんと関かおりさんによる夫婦イラストユニット(2011年結成)。食べ物と人をテーマに、おいしそうな絵本をたくさん[…]
「なつのいちにち」はた こうしろう 偕成社
【ざっくりまとめると】
暑い夏の日、少年が虫取りあみを持って、クワガタムシを捕まえにいく。海沿い、田んぼ、神社、谷川を走りぬけ、めあての森の中へ。
【見どころ】
夏らしい鮮やかで美しい風景
【ジャンル】
虫とりアドベンチャー
夏派
ページからあふれ出そうな迫力ある夏の絵が、この絵本の持ち味だ。
夏の痛いほどの日差しが、こんなにも伝わってくる絵はそうそうない。
遠くまでよくみえる晴れ渡った日は、現実でもすごく気持ちがいいものだけど、この絵本は同じくらいテンションを上げてくれる。
クワガタを捕りにいくだけの話なのに、何回くりかえし読んだだろう。
「なつのいちにち」はセリフが少なくて、絵で勝負という感じだ。
静かな絵が続いたかと思うと、躍動感のある絵があらわれる。
夏の音や匂いがページからただよってきそうで、土がこちらまで飛んできそうだ。
ちなみに、この絵本はうちの4歳の娘がものすごく好きな絵本でもある。
軽く100回は読んでるかも。
「なずず このっぺ?」カーソン・エリス アーサー・ビナード / 訳 フレーベル館
【ざっくりまとめると】
新芽に集まって、昆虫語でざわつく虫たち。
芽は日に日に生長し、昆虫たちの憩いの場になっていく。
一時はクモに奪われかけるが、鳥に救われ、植物は赤い花を咲かせた。
季節が変わって花は枯れ、しおれて、昆虫たちは残らず去ってしまう。
やがて春になると、おなじ場所にたくさんの新芽が芽吹いた。
【見どころ】
昆虫たちの世間
【ジャンル】
日常昆虫会話
実用昆虫語フレーズ
ユニークな昆虫語のおかげで、昆虫が実際に会話しているような楽しさがある。
どの言葉も理解できないが、なんとなく想像できるシチュエーションになっている。
昆虫たちからすると、新芽はすごく惹かれる存在みたいだ。
キューブリックの「2001年宇宙の旅」オープニングで、モノリス(黒い石柱)に群がるサルたちが描かれていたけど、あれとちょっと近いものを感じる。
人間からするとなんてことない小さな植物が、虫たちには居心地がよくてすばらしい場所だったりする。
昆虫たちが物を持ち寄って、植物をツリーハウスのように改造していくところに、虫と植物の親密さがよく表現されていると思う。
クモの侵略に対する昆虫たちの反応もなんだかリアル。
抗議はするものの、クモが相手じゃ、それ以上はどうしようもないのだ。
この絵本はにぎやかな昼の様子も楽しいけど、夜が美しい。
夜に歌うキリギリスと、夜に産まれて空を舞うチョウチョ。
とても美しいシーンだ。
「おおきなキャンドル馬車にのせ」たむら しげる 偕成社
【ざっくりまとめると】
小人のニコさんとロボットのダダくんは、ハチの巣をとかして作ったキャンドルを馬車に積んでお出かけ。
道すがら、イチゴを収穫する小人たちや、シナモンやカカオ、卵を運ぶ小人たちと出会う。
汽車にはたくさんのパティシエたちがぎっしり。
この日は「こどもたちのおいわいの日」で、みんなで港でケーキ作り。最後に、ニコさんとダダくんが持ってきたキャンドルを飾りつけて完成。
【見どころ】
小人のケーキ作り
【ジャンル】
建築クッキング
ケーキ大会
くわしい説明はないけど、小人の世界のお話らしい。
この日は「こどもたちのおいわいの日」というらしく、ニコさんとダダくんはキャンドルを担当している。
きっと本業も職人的な仕事なのだろう。
この小人の世界では、馬も猫も犬も小さい。
道具も小人サイズに仕立てられている。
こどもたちのために、みんなで巨大なケーキを作る一日、というのがすてき。
牧歌的で、ゆったりしている。
ニコさんとダダくんが、海のそばで(小川かも)、ハンバーガーを食べながらひと休みするのだけど、見ているこちらもいっしょになってひと休みしてる気分。
こういう忙しいけどシンプルで、お祭りのようにウキウキできる一日が、年に一回でもあるといいのに。
残念ながら、そういう一日はぱっとは思いつかないな。
「ふゆのはなさいた」安東 みきえ / 文 吉田 尚令 / 絵 アリス館
【ざっくりまとめると】
池のほとりで、こねずみが泣いていると、金魚が水面に顔を出した。
泣いている理由を聞いてみると、友達のツバメが飛び去り、仲のよかったヤマネが目をつむって相手にしてくれなくなったからだという。
金魚がこねずみをなぐさめるうちに、二人は仲良くなり、翌日も会う約束をして別れた。
ところが雪が降って池が凍ってしまい、金魚は会いに行けなくなる。
池の中で悲しんでいると、たくさんの金魚が集まってきて・・・。
【見どころ】
池一面に咲いた大きな花
【ジャンル】
陸上生物と水中生物の友情物語
かんちがい屋の似たもの同士
ちょっと暗い感じの絵で、ロシア的というか東ヨーロッパ的というか、やけに悲しみがただよっている。
こねずみが泣いているシーンから始まるのだけど、池から顔をだす金魚がきれいで、そこからちょっと華やぐ。
こねずみは他の動物の習性を知らずに、嫌われたと思って悲しんでいる。
動物の習性はわかりやすい。
冬になったら南に渡ったり、冬眠したり。
人間にも習性はある。
個人で見ていっても、何かしらありそうだ。
こねずみのように単純じゃなくても、同じように嫌われたと勘違いして悲しんでいることはあるかも。
こねずみと金魚でいうと、陸上と水中の違いは大きい。
誤解のもとはいくらでもあるだろう。
金魚は苦労しつつも、ものすごく鮮やかに、誤解を解いてみせたけど。
「パンどろぼう」柴田 ケイコ 角川書店
【ざっくりまとめると】
パンが大好きなパンどろぼうは、おいしいパンを盗むのが日課。
ある日、「せかいいちおいしいもりのパンや」というパン屋を見つけ、さっそくパンを盗んでみるが、ひどくまずかった。
これで世界一を名乗るパン屋に腹を立て、抗議しに行く。
話し合いの結果、このパン屋でパン作りのお手伝いをすることに。
【見どころ】
パンどろぼうの手口公開
【ジャンル】
町のハードボイルドさん
パンを盗ませたら天下一
慣れた感じで、余裕の笑みをうかべて逃げるパンどろぼうをみると、ワケありのちょっとしたワルかと思うが、ページをめくるとわかる。
ただのパン好きだ。
パン型のクッション、パン型のソファ、パン型のトースター、パン型のティッシュ箱、パン型のラジコン、パン型のドア、それから窓枠や時計や観葉植物までがパン型をしている。
とにかく、パンが好きらしい。
パンどろぼうになるくらいパンが好き。
好きすぎて、犯罪にだって手を染める、というわけだ。
そんなパンどろぼうに、負けないほどおかしなことになっているパン屋がある。
お店が食パン型の「せかいいちおいしいもりのパンや」だ。
ここの店主は、髪型がパンになっている。
ヒゲもパンっぽい。
パンの種類も豊富で、遊び心もある。
マーケティング的には優れていても、肝心のパンがまずいという、わりと現実にも見られるタイプのパン屋。
こういうお店を救えるのは、パンどろぼうのようなその道のオタクかもしれない。
「ゆうだちのまち」杉田 比呂美 アリス館
【ざっくりまとめると】
夏のよく晴れた午後、ゆきちゃんとお父さんがお出かけすると、夕立が降ってきた。
二人はあわててカフェに避難。
雨がやむまでパフェを食べてすごし、夕立が去ってから外に出ると、ゆきちゃんやお父さんが道路に鏡のようにうつった。
【見どころ】
夕立で路面店が大騒ぎ
【ジャンル】
どしゃ降りウォーク
楽しい雨やどり
晴れていたのに、いきなり暗くなって雷雨となる夕立。
夕立はまったく読めないわけでもなくて、朝からやたら蒸し暑かったりする。
最近は日本が広範囲に亜熱帯のようになってしまって、雨の量がとんでもない。
夕立という風情のある名前より、ゲリラ豪雨という危険な感じのする名前が似合うようになってしまった。
夕立のような突然の雨を楽しむには、あくせくしないこと。
カフェでの雨やどりが、パフェを食べながらゆっくり過ごすご褒美みたいな時間になる。
気温もちょっと下がるし、ホコリやら排気ガスやらが洗い流されて、町も空気もきれい。
オレンジ色の美しい夕暮れもやってくれば、言うことなし。
「かわいいことりちゃん」コナツ マキコ / 作 コナツ コウイチ / 絵 ニジノ絵本屋
【ざっくりまとめると】
オカメインコの「ことりちゃん」との日々。
食べて、伸びて、飲んで、遊んで、撫でて、飛んで、歌って、などのハイライトシーン。
【見どころ】
かわいい小鳥の表情
【ジャンル】
バードライフ
小鳥との暮らしを擬似体験
小学生のころ、クラスで小鳥を飼うのがちょっと流行っていて、飼ってる人たちがすごくうらやましかったのを覚えている。
近所のショッピングセンターには、小鳥や魚を売っているお店があって、そこに行くのも楽しみだった。
けっきょく、うちの親は飼ってくれなかったが、社会人になって、独学でバードウォッチングにはまり、思えば、この探究心は飼ってもらえなかった鬱憤から来てたのかもしれない。
それはともかく、その後、猫を飼ってすっかり鳥のことは頭から離れてしまい、今に至っている。
それでも、バードウォッチングの成果か、今でも鳥のシルエットや飛び方なんかで、種類を見分けることができる。
もし今、家で鳥を飼うなら、この絵本のようなインコがいい(猫がいるから絶対飼えないけど)。
巻末の「ことりちゃん」の写真を見ると、すごくきれいな黄色で、目とクチバシが小さくてかわいい。
嘘みたいに小鳥が人になついてる。
こどものとき、夢に見たような光景だ。
「シロナガスクジラ」ジェニ・デズモンド 福本 由紀子 / 訳 BL出版
【ざっくりまとめると】
シロナガスクジラの生態について。
【見どころ】
シロナガスクジラのスケールがわかるイラスト
【ジャンル】
シロナガスクジラ事典
地球上でいちばん大きな生き物
シロナガスクジラは地球最大の生き物で、その重さゆえに(160トンくらい)、海でしか生きられない。
海水なら浮くことができるけど、陸上では骨がもたない。
シロナガスクジラの体長は30メートル。
恐竜には、30メートルで100トンくらいのがいたそうだから、そんなのが陸上を走っていたことがつくづく不思議だ。
恐竜は絶滅してしまったが、シロナガスクジラも絶滅危惧種となっていて危ない。
人間が保護しないと生き残りが難しく、数もなかなか増えていかないところをみると、今の地球は海の生き物に厳しい環境なのだろう。
シロナガスクジラくらい大きくなると、スケールが違いすぎて、人間には想像もつかないところがたくさんある。
1600キロ以上離れた相手とコミュニケーションをとることができたり、世界でもっとも大きな声で鳴くのに、低音すぎて人間の耳には聞こえなかったりする。
まあ、人間も機械を使えば、遠くの人とコミュニケーションはとれるし、クジラの低音も聞きとれるのだけど。
それにしても、クジラのコミュニケーションがどんな内容なのか気になる。
「すいかのプール」アンニョン・タル 斎藤 真理子/ 訳 岩波書店
【ざっくりまとめると】
すいかが熟した頃がすいかびらき。すいかのプールに村の人たちが集まってくる。
サクサクと実のうえを歩いたり、実を投げて遊んだり、すいかの水たまりを作ったり、皮ですべり台を作ったり。
【見どころ】
冷たくてシャクシャクの巨大すいか
【ジャンル】
妄想プール
すいかの触感を楽しむプール
説明は特にないけど、この村では巨大なすいかができるらしい。
(小人という設定ではなさそう)
毎年、すいかが熟れると半分に割れてプールに使われる。
種が多くて泳ぎにくかった年もあるらしい。
リアルに想像すると、すごく気持ちよさそうである反面、底なし沼のように沈んでいかないかという心配もある。
すいかのプールで溺れると、かなりシャレにならないに違いない。
この絵本の場合、強度もしっかりしていて、そんな心配はなさそうだけど。
せいぜいすいかの水たまりができるくらい。
ほかには、かなりベタベタするんじゃないかという心配。
何日かはすいかの匂いが体から取れないだろうし。
「くもやさん」の「あまぐもシャワー」は必須。
「ひびけ わたしの うたごえ」カロライン・ウッドワード / 文 ジュリー・モースタッド / 絵 むらおか みえ / 訳 福音館書店
【ざっくりまとめると】
6歳のころの「わたし」は、毎朝、長い時間をかけて学校に通った。冬の朝、スクールバスに乗り遅れないように、雪が積もった道を一人でいそぐ。まっくら闇の森の中、怖いから歌を歌うと、あたりが明るくなる。歌いながら、スクールバスが見えてくるまで。
【見どころ】
雪景色を歩く少女
【ジャンル】
サバイバル登校
歌の効用
カナダの冬が舞台。
カナダはすごく寒いイメージだが、何しろ世界で2番目に国土が大きいので、地域によってだいぶ違うらしい。バンクーバーなど、南のほうだと、冬でも氷点下までいかない。
作者のカロライン・ウッドワードは、ブリティッシュ・コロンビア州(バンクーバーと同じ)で育ち、この絵本と同じように、長い道のりを歩いて通学していたらしい。
この絵本では、雪深い村に住む少女が描かれている。
牧場や農場の多い村なのか、だだっ広い土地の中に、家がぽつんとあるようなところで、隣家まで行くのにもちょっとした距離がある。
スクールバスの停留所まで行くのにも、6歳の少女にはサバイバル。
動物たちの気配がする森の中をぬけ、牛の群れのそばを通らないといけない。
通学って毎朝のことだから、こどもにとってちょっとした体験だ。友だちと話したり、寄り道して帰ったり、いろんなものを観察したり。
僕も通学の風景は今でもよく覚えている。
この絵本の少女の場合、サバイバルの感じが強く、自分を奮い立たせる必要があった。その手段が歌。
歌は魔法で、呪術で、悪いものを近づけないバリア。
そう信じることは、意外とバカにできない効果があると思う。
「ぼくのおじいちゃん」カタリーナ・ソブラル 松浦 弥太郎 / 訳 アノニマ・スタジオ
【ざっくりまとめると】
ぼくのおじいちゃんは毎朝6時に起き、犬の散歩。時計職人だけど、時計はみないし、新聞も読まなくなった。ピラティスとドイツ語を習い、草の上でランチ。ゆっくり手紙を書き、夜には友だちとおしゃべり。ぼくのおじいちゃんの楽しそうな毎日。
【見どころ】
明るい色彩で描かれたおじいちゃんの日常
【ジャンル】
ポルトガル絵本
おしゃれで美しい暮らし
2014年ボローニャ国際児童図書展で国際イラストレーション賞を受賞。11言語以上に翻訳され、日本ではCOW BOOKSの松浦弥太郎が訳している。
「ぼく」のおじいちゃんは老後をうまくやっている。
ポイントは、規則正しい、身だしなみに気をつける、時計をみない、習いごと、自由、手紙を書く、友だちとおしゃべりする、たまの手料理を楽しむ、おいしいおやつ、といったところ。
毎日を楽しくすごすコツが、ぜんぶ詰まっている気がする。老後でなくても、取り入れられることはあると思う。
時計だってたしかに見過ぎの気がするし、回数を意識的に減らすと、何か変わるだろう。
いちばん難しいのは「自由」というやつ。
おじいちゃんには よていなんて ないんだ。
やりたいことや すきなことを しているだけ。
こればかりは、仕事をしている世代にはすごく難しい。そもそも、たとえそういう条件が揃えられたとしても、自由をもてあます気もする。
だから、今のうちから工夫できることがあるはず。1歩目として、普段まずやらないことを、試しにやってみるのもいい。
植物を育ててみるとか、朝の散歩もしくは夜の散歩とか、おやつを作ってみるとか。
日々のルーティンをちょっと狂わせないといけないようなことを、あえてやってみる。
おいしそうな絵本といっても、絵の好みは人によってさまざま。どんなに人気があっても、いまいちピンとこないな、ということもあります。あるいは、食べ物の描写が人気なのじゃなくて、ストーリーによる人気なのかも。この記事では、[…]