おいしそうな絵本といっても、絵の好みは人によってさまざま。
どんなに人気があっても、いまいちピンとこないな、ということもあります。
あるいは、食べ物の描写が人気なのじゃなくて、ストーリーによる人気なのかも。
この記事では、料理や食べ物がおいしそう、という一点にしぼって、おすすめを紹介します。
もちろん、ストーリーや構成もすごく重要なのは間違いないです。
それはそれとして、シンプルに、めちゃくちゃおいしそうな絵だなあ、という絵本を選びました。
「かける」はらぺこめがね 佼成出版社
【ざっくりまとめると】
かける食べもの大集合
【見どころ】
白ごはんに落ちてく、ふりかけ、生卵、納豆のもはや美しい瞬間
【ジャンル】
重力フード
かける娯楽
食のなかでも、かける行為に目をつけたはらぺこめがねは、すご腕だ。
かけるという作業は、コショウや青のりであれば、最後の仕上げ。
カレーやかき氷のシロップなら、なければ何も始まらない絶対的な主役。
この絵本では、そんな脇役も主役も、等しく大きな扱いだ。
それもそのはず、当然だと思う。
かけることには、やたら食欲を誘うところがあるもんで。
かけるは食べると同じ。
そのくらいの愛おしさをもって、かける行為を味わえる余裕を持ちたい。
「おいしいは美しい」を追求する、はらぺこめがねの絵本どんな絵本作家さん?原田しんやさんと関かおりさんによる夫婦イラストユニット(2011年結成)。食べ物と人をテーマに、おいしそうな絵本をたくさん[…]
「おじいちゃんとパン」たな パイ インターナショナル
【ざっくりまとめると】
パン好きのおじいちゃんから、甘いパンを分けてもらう少年。少年はだんだん大人になり、おじいちゃんはもっとおじいちゃんになって、甘いパンを分けあう日課だけは変わらない。
【見どころ】
バターを塗ったトーストの色
【ジャンル】
食パンクッキング
甘いトーストは祖父の味
トーストのいろんな食べ方が出てくるけど、どれも庶民派。
使ってる食パンも、たぶん市販の普通のやつ。
それがかえって、妙においしそうにみえる。
バターを容赦なく塗りたくって、その上から、主役の甘いものをたっぷりのせる。
カロリーを気にしない食べ方が、やっぱり一番おいしい。
少年をひきつけたのも、きっとおじいちゃんのそういうところ。
ほんと、こういう飾らない甘いトーストにブラックコーヒーがつけば、もう何も言うことはない。
「きょうのごはん」加藤 休ミ 偕成社
【ざっくりまとめると】
夜ごはんの食材を買いにきた人たちでにぎわう商店街。各種各様の家ごはんと、屋台ごはん。
【見どころ】
こんがりきつね色の、超絶技巧のコロッケ
【ジャンル】
ホームグルメ
隣家の夕食はいい匂い
この絵本に出てくるのは、日本の家ごはんでも、人気のあるメニューばかり。
料理風景は温かいタッチで味のある絵だけど、リアルというわけじゃない。
ところが、完成した料理のアップシーンになると、ものすごく繊細な絵になる。
これ、本物よりおいしそうなんじゃないか、と思うくらい。
そして、写真とはちがう、絵ならではのやわらかな曲線と、色のぬくもり。
眺めていると、味を想像してしまい、コロッケなんか、サクッとした音が聞こえそう。
「めんたべよう」小西 英子 福音館書店
【ざっくりまとめると】
8種類のうどん、8種類のスパゲッティ、6種類のそば、4種類のラーメンが登場。
【見どころ】
実物大に迫るページいっぱいの麺料理たち
【ジャンル】
麺類ショー
ザ・麺
麺類の画集という感じで、気持ちがいいほどに、ストーリーを取っ払っている。
あらためて、絵本は自由でいいなと思う。
おいしそうに魅せることだけに全力を傾けた絵本だ。
でも、各麺類の冒頭に出てくるお店の絵が、すごく大事だと思う。
お店のたたずまいが、もうおいしそう。
昔から疑問だったけど、麺をすする行為って、どうしてこんなにも食欲をそそるのだろう。
「パンのずかん」大森 裕子 白泉社
【ざっくりまとめると】
パンを特徴ごとに紹介。「まるいパン」「やまがたパン」「ながいパン」「はさむパン」などなど。
【見どころ】
あらゆるパンが並ぶパン屋「くまベーカリー」
【ジャンル】
パンマニア
ワールド・オブ・パン
惣菜パンが得意な昔ながらのパン屋もいいけど、おしゃれな本格派のパン屋もいい。
本格派のパン屋が日本全国に増えたことで、パンにくわしい人も増えた。
パンの図鑑をひらいても、近所で買えないパンばかりだったら、ちょっとつまらない。
でもありがたいことに、「パンのずかん」に出てくるパンは、ほとんど普通に買える。
ベトナムの「バイン・ミー」は難しいけど。
この絵本から食べたいパンを選んで、パン屋に探しに行くのも楽しそう。
いちおう図鑑らしく、それぞれのパンには短い説明文がつく。
中には「へえ」と感心するミニ情報も。
ホンモノ顔負け、大森裕子の絵本どんな絵本作家さん?図鑑らしい緻密でリアルな絵を描けるいっぽうで、かわいらしい動物のキャラクターも描くことができる作家さんです。写真のような絵と、ゆるいキャラクター[…]
「あっちゃんあがつく たべものあいうえお」さいとう しのぶ リーブル
【ざっくりまとめると】
「あっちゃん あがつく あいすくりーむ」から始まる、五十音順のたべものあいうえお。
和食、洋食、お菓子、フルーツなど、定番の食べ物やなつかしい食べ物から、特別な日の食べ物まで。
【見どころ】
かわいくておいしそうな食べ物たち
【ジャンル】
たべもの童謡
食べたい名場面集
「あ」から「ん」で終わりじゃなく、濁音と半濁音まであるので、69音ぶんもの食べ物が出てくる。
かなりの分量なのだけど、全ページのクオリティーがとっても高い。
完成に2年かかったというのも納得のできばえだ。
単に食べ物を描いてるわけじゃなく、キャラ化した食べ物たちのストーリーもある。
ひとつ1ページとはいえ、69のストーリーを作り出したことになる、
たぶん、ふつうに1冊の絵本を作るほうが楽だと思う。
それにしても、さいとうしのぶさんが描く食べものはいつもおいしそう。
色をつけるのがすごくうまいし、自然でやさしい。
どのページもおいしそうで楽しそうなのだが、ひとつ紹介するとしたら、エビフライ。
卵の温泉につかるエビフライ、パン粉をかけ合うエビフライ、油にダイブするエビフライ、こんがり焼けた体を休めているエビフライなど、セレブがリゾートホテルのプールでパーティーしているようだ。
下の記事でも、すごくおいしそうな絵本を紹介してます。
大人向けの絵本を探してるけど、どんな絵本を読みたいのか、自分でもよくわからない探すにも多すぎるし、本屋とか図書館に行くの面倒自分の経営してるお店に絵本を置きたいけど、選ぶ時間がない[…]