名作絵本おすすめ7選 | 読んでほしい定番のロングセラー

  • 2021年8月24日
  • 2023年10月31日
  • 絵本
トマもぐ
どうも、司書歴15年のトマもぐです。

出版年は古いのに、いまだに書店で最新の絵本といっしょに、ふつうに棚にならんでいる絵本があります。
(増刷をくり返してますので、ぴかぴかの新品です)

いわゆる名作絵本、定番絵本、ロングセラー絵本と呼ばれる作品たちです。

親がこどものときに読んだ絵本を、今のこどもたちも読んでる、なんてことが普通にあるのが絵本です。

今回、長生きの絵本のなかでも、とくにおすすめしたい名作絵本を厳選しました。

新しい絵本が好きな方は、下の記事がおすすめです。2021年に出版された絵本から、おすすめを厳選しました。

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「すてきな三にんぐみ」トミー・アンゲラー 今江 祥智 / 訳 偕成社

【ざっくりまとめると】
黒マントのどろぼう三人組は、夜になると強盗をくりかえし、たっぷりお宝をためこんだ。
ある日、いつものように馬車を襲ってみると、みなしごの女の子が一人で乗っているだけ。
隠れ家に連れ帰ったところ、女の子にお宝の使い道をたずねられ、片っぱしから捨て子やみなしごを集めてくることに。

【見どころ】
青と黒の夜

【ジャンル】
クライムヒーロー

ロビン・フッド部

この三人組には謎が多い。
どうして強盗するようになったのか、三人の関係は何なのか、もともと何をしていた人たちなのか。

そんなにお金に執着してるようでもなく、何しろ、みなしごの女の子ティファニーに言われるまで、使い道を考えたこともなかったくらいだ。

ロビン・フッドのように、金持ちから奪って貧しい人たちに配るというつもりもなかった。
確かなのは、強盗の腕前と、相手に直接的な危害を与えないルールのようなもの。

そして謎といえば、三人組の性別はどうだろう?

この三人組は、女性である可能性も十分にある。
(おじさんと訳されているところがあるが、原文にはない)

まあ、男でも女でもどちらでもいいのだろうけど、三人組が女性だと考えると、すっきりする部分も多い。

平和的な強盗のやり方、宝石や指輪や金銀財宝を愛でるところ、たくさんの子供を集めて育てようという考え、といったあたり。

もちろん男でもあり得るのだけど、それにしても、と思う。

ためこんだお宝を使って、捨て子やみなしごをどっさり集めて、みんなが住める城を買う。
噂が広まって、赤ん坊がさらに城に集められていく。

こんなことができるのは女性だと思うのだけど、どうでしょう?

「まよなかのだいどころ」モーリス・センダック じんぐう てるお / 訳 富山房

【ざっくりまとめると】
真夜中、男の子のミッキーが騒音で目をさまし、怒鳴ったら「まよなかのだいどころ」に落っこちた。
パン屋さんたちはミッキーをミルクと間違え、粉といっしょにこねてしまう。
ミッキーは焼かれる前に飛びだして、パンのねり粉で作った飛行機でミルクを探しに。
やがて大きなミルク瓶をみつけて、ミルクケーキが完成。

【見どころ】
ちょっと不気味なパン屋のおじさんたち

【ジャンル】
真夜中のパティシエ

ミルクケーキとミッキーケーキ

ミッキーは男の子の名前。
ミルクと響きが似ているから、パン屋さんにミルクと間違われる。

外見じゃなくて、名前で判断するパン屋のおじさんたちは、陽気な感じなのだけど、ちょっと不気味でもある。

何しろ、パン粉にミッキーを混ぜて、オーブンで焼こうとするのだから、「まあ、陽気なおじさんたちね」じゃ済まない。

悪気はなく、おいしい朝のミルクケーキを作ることにひたむきなだけ、というのも怖い。

とはいえ、ミッキーもぶっ飛んでいるので、問題なし。
パン粉で飛行機を作ってミルク瓶をみつけ、頭からダイブする。
ミルク探しを成し遂げたあとは、すっ裸でコップをかぶって「コケコッコー」と叫ぶのだ。

この子なら、パン屋のおじさんたちも怖くない。

「まよなかのだいどころ」は、調味料の高層ビル群でできた、真夜中だけど明るい、眠らない場所だ。

そこには、毎日、朝のケーキを作っている、働き者のパン屋さんたちがいる。
ほんとは、ミッキーみたいに、邪魔しちゃいけないのかも。

ミッキーは無事に帰ってきたけど。

「つきのぼうや」イブ・スパング・オルセン やまのうち きよこ / 訳 福音館書店

【ざっくりまとめると】
「おつきさま」は池に映った、もうひとりの「おつきさま」が気になり、「つきのぼうや」に連れて来てほしいとお願いする。
「つきのぼうや」はカゴをひとつ持って、空を降りていく。
雲も飛行機も木の上も通りすぎ、海に飛びこんだ。
海の底で手鏡をみつけ、小さな月と勘違いした「つきのぼうや」。それを「おつきさま」に送り届けたところ・・・。

【見どころ】
男の子が空から降ってくる

【ジャンル】
生身スカイダイビング

スローな落下

デンマークの国民的画家イブ・スパング・オルセンの代表作。
このブルーの縦長の絵本は読んだことはなくても、一度は目にしたことがあるんじゃないかと思う。

1975年の絵本だけど、新刊書店でもいまだによく見かけるほど、根強い人気。

ブルーの色合いと、めずらしい細長い形状と、月と男の子の愛らしいイラストがひときわ目をひく。

「つきのぼうや」といっても、見た目はふつうの人間の男の子。
そんな男の子が空中をのんびり落下しながら、地上の人たちとちょっとしたコミュニケーションをとるというのが、ほどよくぶっ飛んでる。

ところで、「おつきさま」は水面や鏡に映った自分が、ほかならぬ自分とは夢にも思っていない。

自分と他者という区別をつける必要が、社会生活のない「おつきさま」には必要ないからかもしれない。

「10にんのゆかいなひっこし」安野 光雅 童話屋

【ざっくりまとめると】
10人のこどもたちが左のページのお家から、右のページのお家へ順番にひっこし。

【見どころ】
美しい家

【ジャンル】
数の絵本

かわいいお引っ越し

部屋のサイズにくらべて、ちょっと大きめのこどもたち。
こどもたちだけで住んでいる、こどものための家ということなのかもしれない。

「美しい数学」というシリーズの絵本で、数をかぞえて遊べるように工夫されている。

左ページに今住んでいる家の断面、右ページに引っ越し先の家の外観。
家の断面には、こどもたちの生活ぶりがみえる。

ページをめくると、こんどは左ページが住んでいる家の外観で、右ページが引っ越し先の家の断面に変わる。

家の窓はいくつか穴があいていて、前のページの家の内部がみえるようになっている。
ページをめくるたび、左の家には何人いて、右の家にすでに何人が移ったか、考えさせる仕組みだ。

大人は退屈するかというと、そうでもない。
安野光雅の美しい絵が、眺めてるだけでも十分楽しいから。

10にんのゆかいなひっこし

「うみべのおとのほん」マーガレット・ワイズ・ブラウン / 文 レナード・ワイズガード / 絵 江國 香織 / 訳 ほるぷ出版

【ざっくりまとめると】
子犬のマフィンは耳がよくて、なんでも聞いたことがあるのが自慢だが、海だけは聞いたことがなかった。
ボートに乗って航海に出てみたところ、海はいろんな音に満ちている。
マフィンはそのすべてを聞いたかどうか。

【見どころ】
子犬と船長の船上生活

【ジャンル】
海の日常

海を聞くとは

この絵本の原書の初版は、1941年。
第二次世界大戦の頃に出版された、長生きの絵本だ。

マーガレット・ワイズ・ブラウン(文章を担当)とレナード・ワイズガード(絵を担当)の定番コンビ。
マーガレット・ワイズ・ブラウンが42歳という若さで亡くならなければ、もっとたくさんの名作が生まれていただろうと思う。

やさしい語りに、グリーンとオレンジを基調としたイラストがついている。

主役は、炭で塗りつぶしたような真っ黒な子犬マフィン。
自慢の耳で、海を聞いてやろうとボートに乗りこむ。

陸ではどんな音も聞いてきたと自負するマフィンも、海は勝手がちがう。
陸上生物には限界がある。

ましてマフィンは海が初めてらしく、さすがの犬の聴覚も、海には太刀打ちできないようだ。

そのことを暗に示すように、マフィンは海に落っこちてパニック。

「おやすみ おやすみ」シャーロット・ゾロトウ / 文 ウラジミール・ボブリ / 絵 ふしみ みさを / 訳 岩波書店

【ざっくりまとめると】
いろんな眠りのかたち。クマ、ハト、魚、ガ、馬、アザラシ、シラサギ、バッタ、カメ、イモムシ、クモ、犬、子猫。

【見どころ】
美しい夜のイラスト

【ジャンル】
個性豊かな眠り

眠らない動物はいない

あらゆる動物は眠る。

魚だって、泳ぎながら眠ったり、水草に隠れて眠ったりする。
見た目からは分かりにくいけど、虫も眠る。

眠らないと頭の働きや体の動きが鈍くなるし、強制的に眠らせなかったら、死んでしまう。

あらゆる生き物にとって、眠りが重要なことはわかる。
でも、人生の多くを眠りに費やすように設計されている仕組みが、不思議といえば不思議。

人間は一日に7、8時間くらいだろうか。
人生のおよそ3分の1を眠ってすごすと言われている。

それくらい眠らないと、脳も休まらない?
そもそも、脳は眠っている間も働いてるらしいし。

ともかく、眠りは不思議だけど、それが生きるということでもある。
生きているから、眠れる。あたりまえだけど。

「ゆきだるま」レイモンド・ブリッグ 評論社

【ざっくりまとめると】
大雪の日、少年は大きな雪だるまを作った。夜になると、雪だるまが動きだし、少年は家に招き入れる。好奇心いっぱいの雪だるまを案内してまわり、遊んですごす。ごはんを食べたあと、今度は雪だるまが空を案内してくれる。吹雪の中、宮殿のある街の上空を飛ぶ。ところが朝日がさしはじめ、いそいで家に帰って元の場所で別れた。少年が一眠りして雪だるまに会いにいくと・・・。

【見どころ】
アクティブな雪だるま

【ジャンル】
サイレント絵本

雪だるまの短い一生

初版は1978年。最初から最後まで文字がないので翻訳の手間がなく、日本版も同年「ゆきだるま」というタイトルで出ている。

漫画のような細かいコマ割りで、登場人物のちょっとした動きまでも丁寧に表現している。

寒い日を寒そうに描くからこそ、暖かそうな行為がきわだつ、というのがレイモンド・ブリッグズはうまい。
雪だるまを作る合間のティータイムとか、見ているだけでほっと温まる。

この絵本の雪だるまは、丸い雪のかたまりを重ねただけのシンプルなものと違い、より人間に似せて作られている。この少年にとっての雪だるまは、ヒト型の大人であるらしい。

でも雪だるまからすれば、何もかもが初めてだから、大きな子供みたいなものだ。少年がいろいろと面倒をみてやらないといけない。

雪だるまはお返しに、外の世界を案内する。もとは空を舞っていた雪だから、外にくわしいのだろう。

だれもがご存じのとおり、雪だるまはあっという間に溶けてしまう。寿命は短い。

短いけど、ワクワクする体験が、この雪だるまと少年の一夜のできごとに凝縮されている気がする。

下の記事でも、大人向けの絵本を紹介しています。
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