ねこ好きにおすすめしたい絵本14選 | 猫と同居10年の司書のとっておき

  • 2021年6月20日
  • 2023年10月31日
  • 絵本

トマもぐ
どうも、猫を2匹飼ってるトマもぐです。

猫はヒトの生活圏にすっかり溶けこんでるので、猫が登場する本は山ほどあります。

ケチャもぐ
猫専門の雑誌があるくらい。

飼い猫と生活して日々思うのは、「いちいちかわいい」ということ。

本人たちはそのつもりはないだろうけど、人を笑わせるのもすごくうまいです。

これまで多くの作家さんが猫を取りあげてきたのも、当然というもの。

こんなに魅力的なスーパースターは放っておかれるはずがない。

猫がちょい役の絵本もいいですが、今回選んだのは猫が主役の絵本限定です。

目次

春を感じる絵本をお探しでしたら、下の記事で紹介しています。

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「ねこはるすばん」町田 尚子 ほるぷ出版

【ざっくりまとめると】
飼い主が外出すると、ねこは猫の街にお出かけ。
喫茶店、美容室、本屋、映画館、釣りぼりなどで気ままにすごし、飼い主が戻ってくるまえに帰宅。

【見どころ】
二足歩行の猫

【ジャンル】
ドキュメンタリー

猫のプライベート

ちょっと太りぎみのふっくらした猫がかわいい。
ずんぐりした、大きめの顔の、ドラえもんタイプの猫。

留守番中の猫はなにをしてるのか?

猫を飼ってる人なら、たぶん一度は考えたことがあるんじゃないかと思う。

人間が家にいても、猫は思いきり気をぬいてるようにみえるけど、それでもかわいい。

かわいいのが猫の仕事のようなもので、ヒトにかわいがられることで生き延びてきた面もある。

人間は、仕事のときと、プライベートのときの顔がちがう。

じゃあ猫のプライベートは? というところから作られた絵本だと思う。

この絵本では、いろんな猫の素の顔がみられる。
現実では見ることのない表情がすごく新鮮。

猫だって、いつもかわいいのは疲れるのだ。

「あばれネコ」キューライス KADOKAWA

【ざっくりまとめると】
「ぼく」が部屋で本を読んでいると、ネコが窓から入ってきて大暴れ。

【見どころ】
ネコのタンバリン

【ジャンル】
キャットダンス

暴れるとはこういうことよ

コントのような絵本で、好みが分かれるかもしれない。

ネコが入念に暴れるのもおもしろいけど、真剣な顔であばれネコと対峙する少年もおかしい。

驚くとか、迷惑そうにするとか、冷めた目で見るとかの反応じゃなく、最初から最後まで、きりっとした顔でいる。

少年はそのあいだ一言もしゃべらない。
お笑い的に言うと、高度なツッコミだと思う。

このあばれネコは、間違いなく暴れにやってきた。

その証拠に、窓から入ってきたとき、すでにタンバリンを手にしている。

ひとつの演目のようなもので、タンバリンで踊るのは最初から決めているのだ。

マユが常に下がっているので、自信なさげに見えてしまうけど、あれはむしろドヤ顔に近い顔なのだろう。

「わたしは ねこ」松田 奈那子 リトルモア

【ざっくりまとめると】
飼い猫の「わたし」の家に、「かなこ」という人間の赤ちゃんがやってきた。
一歳年上の「わたし」はかなこといっしょに成長していく。
やがてかなこは学校に行くようになり、友だちもできて、いっしょに過ごす時間が減っていき・・・。

【見どころ】
猫からみた飼い猫の生活

【ジャンル】
猫のモノローグ

人は人で、猫は猫?

飼い猫の寿命はだいたい15年くらいで、長くて20年ほど。
一歳差の猫と赤ちゃんなら、思春期ごろまではいっしょにいられる。

飼い猫の場合、ずっと子猫のままの性格でいるのだけど、人間はそうはいかない。

学校もあるし、友だちもできるし、勉強や部活や塾もあって、どんどんいそがしくなる。

楽しいことが外にいっぱいできて、猫の相手をする時間はどうしても減っていく。

おそらく世の中の多くの飼い主は、この絵本を読むと、後ろめたさを感じるんじゃないかと思う。

人間の生活は基本的にいそがしいから、猫に十分に構ってやれないことが多々あるのだ。

猫は気にしちゃいないよ、という意見もあるかもしれない。

でもいっしょに暮らしてみると、思っていた以上に人間に依存してることがわかってくる。

ちなみに、我が家は飼い猫が2匹いて、娘が生まれたとき5歳だった。
だから「わたしは ねこ」のように、娘と長い付き合いになるのかどうか。

「人間の暮らし」と「猫の暮らし」は別々だけど、心地よく共同生活ができる。

なかなか他にこういう動物はいないと思う。
猫がこの世にいてくれてよかった。

「ポテト・スープが大好きな猫」テリー・ファリッシュ  / 作 バリー・ルート / 絵 村上 春樹 / 訳 講談社

【ざっくりまとめると】
テキサスの田舎で暮らしている、おじいさんと一匹の猫。
この猫はねずみ一匹つかまえたことがなく、おじいさんのポテト・スープが大好き。
いつもいっしょに魚釣りに出かけても、やっぱり猫はなにもとらない。
ある日、明け方になっても猫は起きてこず、おじいさんは一人で魚釣りに出かけたが、家にもどると猫は消えていた。
数日後、猫は魚を一匹つかまえて帰ってきた。
猫はおじいさんに事のいきさつを語り続けるのだった。

【見どころ】
猫とおじいさんの静かな暮らし

【ジャンル】
老人と湖

猫の役割

表紙の絵が、ヘミングウェイの「老人と海」に猫がついた、という感じでいい。

この絵本に「老人と海」のような激しさは全然ないけど、孤独が染みついたおじいさんのひとり言とか、動物との距離感とかがちょっと似ている。

タイトルにもなっているように、主役のオレンジ色の猫は、ポテト・スープが大好きらしい。

猫を長年飼ってる身としては、人が飲むスープは、猫には塩分が強すぎると心配になる。

それでもおじいさんと猫がポテト・スープをいっしょに食べてる様子は、すごくいい。

普段はベタベタせずにそっけなく振る舞っているふたりだが、ポテト・スープをいっしょに食べているというだけで、実はとても親密なのだということが伝わってくる。

この猫はねずみ一匹つかまえたことがない、何の役にも立たない、というのがおじいさんの口ぐせというか、たびたび猫に対して思うところだ。

でもそれは本気で不満に思ってるというより、むしろかわいいからこそ、からかいたくなるのだろう。

これは大人がペットや子供によくやってしまうことでもある。

そして、ペットや子供のほうは、それを真に受けるということが多々あるのだ。

真に受けた猫が姿を消したときのおじいさんは、世の中の多くの大人と重なる。

ひとりぼっちで心を痛め、相手を過小評価したことを何度も悔いて。

「なぁなぁ、あそぼ〜!」さいとう しのぶ 岩崎書店

【ざっくりまとめると】
子猫のときに、女の子に拾われた「なぁなぁ」。
ずっといっしょにいたけど、大きくなるにつれ、あまり遊んでくれなくなった。
遊んでもらおうと、つい女の子を引っかいてしまい、嫌われたと思った「なぁなぁ」は家出。
野良猫の案内で「ねこのくに」へ行き、気ままな生活を楽しんでいたが、「あなたのたいせつなひとをうつしだす」鏡に出会って・・・。

【見どころ】
ねこのくにの町並み

【ジャンル】
キャットタウン

猫のバカンス

猫を飼ってると、最近遊んであげられてないなあ、と後ろめたい気持ちになることがある。

猫ののんびりした生活にくらべると、人間の生活は忙しすぎるのだ。

ほんとはもっと猫のペースに寄り添えたらいいのだけど、人間にはやることが多すぎてそうもいかない。

だから普段どんなにかわいがっていても、最近あまりかまってあげられてないなあ、と感じる瞬間があるわけだ。

この絵本の場合もう少し深刻で、こどもが成長して友だちができて、猫と遊ぶ時間が激減していくというもので、松田奈那子の「わたしは ねこ」と同じだ。

女の子が遊んでくれなくなるのを、猫の「なぁなぁ」は敏感に感じとって、どうにか気を引こうとする。

本物の猫はこういう人間的な反応をしないと思うけど、人間はどうしてもこういうふうに見てしまうところがある。

やっぱり、人間は動物に対する後ろめたさが身にしみてるのかなあ(個人的に動物に悪さをしたことがあるわけじゃなくても)。

「あのねこは」石津 ちひろ / 文 宇野 亜喜良 / 絵 フレーベル館

【ざっくりまとめると】
猫を失った少女が、猫のあれこれを悲しげに思い出す。
悲しみに打ちひしがれていると、懐かしい猫の声が・・・。

【見どころ】
美しい少女と美しい猫

【ジャンル】
猫ポエム

猫と暮らすということ

宇野亜喜良といえば、神秘的な美少女。
クリムトが描く女性にも通じるところがある。

この絵本に出てくるのは美少女と、美猫。
そこにいるだけで華やかで、おしゃれで、スタイリッシュ。

絵もすばらしいけど、石津ちひろの言葉もすごくいい。
文章自体を絵のように扱い、階段状にきれいに並べてしまう手腕もみごと。

見栄えだけじゃなく、猫を失った少女の言葉は胸に迫ってくるものがある。

こんなに、文と絵が拮抗してすばらしいのもめずらしいかもしれない。

「でんにゃ」大塚 健太 / 文 柴田 ケイコ / 絵 パイ インターナショナル

【ざっくりまとめると】
猫たちが利用する電車「でんにゃ」の一日。
魚屋、屋根、路地裏、公園と、猫たちに馴染みの駅に停車。

【見どころ】
でんにゃのわかりやすい喜怒哀楽

【ジャンル】
世界の変な乗り物スペシャル

猫の在来線

ツッコミどころがいっぱいの、ゆるーい絵本。

まず、猫の電車「でんにゃ」のサイズ感が自由自在。

猫が何匹も乗ることができて、家のそばを通るときはそれなりの大きさだとわかるけど、魚屋の前に座りこんだり、ブロック塀を渡るときになると、ほぼノーマルな猫のサイズに早変わり。

こんなとぼけた顔して、案外、時空を自在に走るすごい電車なのかもしれない。

ゆるーい絵本にふさわしく、目的地には、今や生でみることは難しい土管が置いてあり、でんにゃの基地になっている。

ちなみに、公園の土管は地中に埋まるまえの下水道の管で、下水道工事が進んでなかった時代の風景だ。
そんなドラえもん時代のノスタルジーまでついてる。

やはりこのでんにゃ、ただものではないのかも。

「ながいながい ねこのおかあさん」キューライス / 文 ヒグチ ユウコ / 絵 白泉社

【ざっくりまとめると】
胴体がすごく長いお母さん猫。ある日、子猫はお母さん猫のしっぽのところまで、風で飛ばされてしまう。
子猫はお母さん猫の顔のところへ走って戻ろうとするが、遠すぎて日が暮れてもたどり着かない。
泣き疲れて寝ている子猫を、お母さん猫はしっぽで抱きかかえて顔のところまで運び・・・。

【見どころ】
とぐろを巻くお母さん猫

【ジャンル】
世界最長の猫

ヘビ猫

横長の青い絵本で、石井桃子の「ちいさなねこ」に感じが似ている。

この絵本に出てくる猫は、ドラゴンみたいに胴が長い。
神話の世界のようなもので、子猫は風に弾丸のように飛ばされてしまう。

お母さん猫のお尻のところからは、双眼鏡を使っても、顔がみえないほどの距離。

子猫は必死に走るけど、お母さん猫の顔までなかなか帰れない。

猫って長距離にむかないし、直線をひたすら走り続けることもしない。
大人の猫でもそうなのだから、子猫には酷なことだ。

それでも、お母さん猫は安易に助けず、夜になってやっと、しっぽで運んであげていた。

ここは、ドラゴンのように胴が長い猫がいる世界。
子猫もいずれ、お母さん猫みたいに体が伸びていくだろう。

お母さん猫の体の長さを実感させること、もしかしたら、それが子猫には必要だったのかもしれない。

「せかいねこのひ」井上 奈奈 新日本出版社

【ざっくりまとめると】
ある朝起きたら、だれもが言葉を忘れてしまい、猫の鳴き声しか出てこない。
世界中の人が、喋ろうとすると、「ニャー」と鳴く。
そこで、この日を「せかいねこのひ」と決めてしまい、猫を手本にしてみる。
お腹すいたとき、眠たいとき、うれしいとき、イライラしたとき、わかりあいたいときなど、ぜんぶ猫の真似をしてみると、平和で幸せな一日に。

【見どころ】
世界中の「ニャー」

【ジャンル】
猫の見習い

幸福の秘訣

ドローイングでさらっと即興で描いたような絵が特徴。

とはいえ、よく見ればとても繊細で丁寧、色づかいは大胆で美しい。

簡単そうに描くこと。

もしぼくがこの絵を描いていたとしたら、歯を食いしばっていただろう。
簡単そうに描くことは、すごく神経を使いそうだ。

話そうとしても猫の鳴き声にしかならない一日。
猫をお手本にするには、猫を飼ったことがある人が有利だ。

飼っていても、猫の言葉はわからないけど、機嫌や気持ちはなんとなく感じることができるようになるものだ。

それでも、猫にはけっして踏み入れさせない領域がある。
気まぐれと言われるゆえんだ。

そういうところも含めて、猫をお手本にできたらいい。
きっと、幸せな一日になる。

「ぼくはいしころ」坂本 千明 岩崎書店

【ざっくりまとめると】
野良の黒猫は、道ばたの石ころのように、だれにも気にとめられず、静かに生活している。
恐ろしい敵にみつからないように、声をあげてはいけないと、子猫のときに母猫に教わった。
ある夜、あるお家で、ごはんを食べさせてもらい、その後もごはんをもらうようになった。
すると、ごはんをもっと食べたい気持ちや、うれしい気持ちがいっぱいになり、声があふれ出した。

【見どころ】
黒猫づくし

【ジャンル】
黒猫フェチ

野良猫が声を取りもどすまで

野良猫にもいろいろいるが、石ころのように黙っている野良は多い。
外敵にみつからないためだ。

生きるために、声を隠し、同時にいろんな気持ちも隠して生活している。

野良の生活は、自由で刺激が多く、生きてる実感はあるだろうけど、それはそれは大変だろうと思う。

でも、野良猫と飼い猫の人生、どちらが幸せかは、正直まったくわからない。

うちも黒猫の姉妹を飼っていて、一匹がこの絵本の黒猫とそっくり。
もとは野良猫だったので警戒心が強く、我が家に来てからしばらくは全然鳴かなかった。

初めて鳴き声を聞いたときの感動が、この絵本を読んでいるとよみがえってきた。

声を出してくれたのが、心をちょっと許してくれたと感じたのを覚えている。

今ではあたりまえによく鳴くので忘れがちだが、我が家の猫も石ころのように生きてきたときがあったのだ。

それにしても、猫を飼っている人の心に強く訴えかけてくる絵本だと思う。

「なまえのないねこ」竹下 文子 / 文 町田 尚子 / 絵 小峰書店

【ざっくりまとめると】
名前をつけてもらったことがない野良猫。
靴屋の猫は「レオ」、本屋の猫は「げん」、八百屋の猫は「チビ」、蕎麦屋の猫は「つきみ」など、みんな名前を持っている。
野良猫もじぶんで名前をつけようと、いろいろ探してまわるが、どれもぴんとこない。
何がちがうのだろうと雨宿りをしていると・・・。

【見どころ】
猫目線の町の風景

【ジャンル】
名なし生活

名前のある猫と、名前のない猫

野良猫は警戒心が強いほうがいいと思うけど、完全にヒト断ちして生きていくのは難しい。

食べさせてくれる人を見つけると、暮らし向きはぐっとよくなる。

この絵本の野良猫は、どこにでもいるような猫の風貌で、特別にだれかに構われることもなく、人との関わりは薄い。

名前でよばれる猫たちがうらやましい野良猫。
名前のある猫たちは、居場所がある猫たちでもある。

ちょっと感傷的なストーリーだけど、猫好きはきっと心を揺さぶられる。

何と言っても、絵が美しいし、猫の表情がいい。

「ヒゲタさん」山西 ゲンイチ 徳間書店

【ざっくりまとめると】
チカちゃんは、雨に濡れていた猫を家に招き入れる。
りっぱな口ひげをたくわえた猫ヒゲタさんは、お礼に「ひげのくに」へ案内する。
「ひげのくに」では、人間も動物も自然も何もかもがヒゲを生やしていた。
ヒゲがないと、おまわりさんにヒゲでこちょこちょの罰を受けると聞き、怖くなったチカちゃんは、レストランから飛び出した拍子に、つけひげを落としてしまい・・・。

【見どころ】
ひげのオンパレード

【ジャンル】
ひげワールド

ひげのアレンジ集

巻末の作者のプロフィール写真をみると、模様が口ひげのように見える猫が写っている。
夏目漱石のようなりっぱな口ひげで、この猫が発想の元になったのは間違いなさそうだ。

ヒゲなんて、毎日剃らないといけない身からすれば、ちょっと邪魔者でもある。

はっきり言って、普段はヒゲのいいところなんか皆無なのだけど、こうやってヒゲの世界を見せられると、ヒゲっておもしろい。

ヒゲというものの無意味さが、あらためて実感される。
(無意味だからこその味わい)

でも、猫のヒゲはかなり重要で、ヒゲがないといろいろと生活に支障が出るという。

それにしても、ヒゲタさんはこのりっぱなヒゲの見た目から、紳士なおじさんという設定は免れないみたいだ。

「ネコノテパンヤ」高木 さんご / 作 黒井 健 / 絵 ひさかたチャイルド

【ざっくりまとめると】
猫の手のように小さなパン屋「ネコノテパンヤ」は坂道にある。
店主のお母さんが配達に出ることになり、女の子の「ななえ」が店番をすることになった。
白い霧が立ちこめ、ひとりで店番をしていると、人間の格好をした猫のお客さんが次々にやってくる。

【見どころ】
変装してやってくる猫のお客さん

【ジャンル】
初めての店番

尾道の猫の町

尾道にある「ネコノテパン工場」がモデルで、写真をみると、そのまんま再現されている。

小さくておしゃれで、暖かそうなパン屋。

尾道の坂の町にあるというのも雰囲気がある。
車が通れないところにあるので、歩いて行かないといけないというのもいい。
絵本にしたくなる気持ちがよくわかる。

絵本では、猫のお客さんがやってくるのだけど、異世界との接続みたいなもので、それには条件があるようにみえる。

こどもが一人で店番、ほかにお客さんがいない、白い霧、の3点。

この3点がもれなくそろったときに、猫のお客さんは現れるのかもしれない。

それと何より重要なのが、「ななえ」のように、服を来た人型ネコがやってきても、普通のお客さんとおなじように接すること。

「うちのねこ」高橋 和枝 アリス館

【ざっくりまとめると】
春、野良猫だった猫がうちにやってきて、いっしょに暮らしはじめる。1ヶ月隠れ続け、隠れるのをやめたと思ったら、近づいただけで毛を逆立てて怒る。遠くからこちらを見張っているが、近づくと引っかいたり噛んだり。夏になると、お尻をむけて座るようになったが、触ると噛みついて逃げた。秋、小さな声で鳴くようになったが、ごはんをあげる時でも近づかせない。冬には「わたし」の寝ているところにやってきて、目が合うといきなり飛びかかってきた。いつまでたっても打ち解けない猫が、うちの猫になるまで。

【見どころ】
水彩のにじみで表現された猫の丸み

【ジャンル】
猫との交流

野良猫を飼うということ

作者の実体験が元になっているので、共感できるところが多い。

猫はとにかくかわいいけど、信頼関係を築くのにけっこう時間がかかるもので、何度もめげそうになる。

我が家の愛猫2匹も野良猫だったので、それはそれは苦労した。
最初の半年くらいがかなり大変で、夜行性がそのまんま残っているし、夜中に暴れるのはしょっちゅうだった。

そのときは1年くらいでだいぶなついてくれたと思っていたけど、今思えば、ほんとうに心を許してくれたのは3年ほどいっしょに暮らしてからかもしれない。

シャーッと牙をむいて威嚇する猫のしぐさ。
たいていの場合、怖さのあまり威嚇するのだと途中で知ったが、知らないときはショックを受けたものだ。仲良くなったと思ったらその仕打ち。

でも毎日ごはんをあげて、遊んであげれば、ちょっとずつ心をひらいてくれる。今では、犬のようについてまわるようになった。

「うちのねこ」、この絵本は猫の飼い主みんなの共感がつまっている。

下の記事では、目黒雅也さんの絵がすてきな「ネコのなまえは」をレビューしてます。
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